第1章
ファントムハイヴ屋敷の穏やかな午後。
は起きて部屋で着替えを済ませ、鏡の前で髪飾りを探していた。
以前、セバスチャンがのために贈ってくれたものだ。
美しい赤い宝石が嵌め込まれ、の黒髪にぴったりだと言ってくれたもの。
だが、ない。
引き出しを開けても、宝石箱を探しても、見当たらない。
「……あれ? どこに置いたかしら」
は少し慌てて部屋を探したが、ない。
は広間に出て、使用人らに声をかけた。
「ねえ、みんな。
私の髪飾り見なかった?
どこかに落としちゃったのかも。」
フィニアンは慌てて庭に出ようとしながら
「っぼ、僕は、見てないですよ!」
メイリンが目を泳がせ
「え、えっと……知りません…ですだ!」
バルドはキッチンから顔を出し
「か、髪飾り? そんなの、知らねえよ!」
皆の態度が、どこか白々しい。
は首を傾げ、
「……みんな、何か隠してる?」
そこへ、セバスチャンがきた。
「様、どうかなさいましたか?」
は説明する。
「髪飾りが見当たらなくて、
みんなに聞いたところなんだけど…」
セバスチャンは使用人たちを一瞥し、
笑顔のまま、しかし空気が凍るような声で
「あなたたち……何か、隠していますね?」
使用人たちがビクッと震え、次々に白状し始めた。
「わ、私が広間で落ちてるのを見つけて……
後で届けようと思って、机に置いたんですだ!」
「俺がそれを見て、磨こうと思って……
パントリーの水場に持っていったんだけどよ……」
「僕がパントリーに来たら、髪飾りを見つけて……
後で届けよう!と思って、ポケットに入れてたんですけど……
途中で落としたのかも……」