第1章
は決意した。
もうこれ以上、人を殺さない。
渇きがどれほど強くても耐える。
部屋に鍵をかけ外に出るのをやめた。
血が欲しくて、体が震える。腹の奥が疼く。喉が熱い。
シーツを握りしめて耐えた。
「もう誰も灰にしたくない、
でももっと飲みたい、
でも耐えなきゃ」
欲求が襲い、後悔が追いかける。
思い浮かぶのは灰になった男たちの顔。
彼らの温もり、優しい声。
すべて自分が壊した。
飢えが極限に達した夜、は朦朧とする中で、過去の記憶に囚われた。
かつて、は人間だった。小さな貴族の娘だ。
父と母に愛され屋敷で幸せに暮らしていた。
は父と母に似た美しい緑の瞳が自慢だった。
そして許婚がいた。
その優しい青年と将来を約束していた。
彼とは舞踏会で手を繋ぎ、庭で未来を語り合った。
そんな日々が、突然終わった。
ある夜、屋敷が襲われ、彼女は攫われた。
目覚めた場所は豪華な部屋だった。
誘拐犯はに愛の言葉をたくさん囁いた。
豪華な金の装飾、煌びやかなシャンデリア。
美味しい食事と、着れないほどの数のドレス。
でも、外へは出られない。
窓は鉄格子で塞がれ、扉は常に鍵。
退屈だった。
それは永遠に続くような息苦しい日々だった。
部屋にある鏡をみる。
映るのはもちろん自分の姿だ。
だが、思い浮かべるのは同じ緑の瞳を持つ両親だった。
首元に小さな傷が2つあることに気づく。
しかし外に出られない以上、どうでもいいことだった。
ある日、耐えかねて誘拐犯に盾をついた。
「こんなのうんざり!お願いだから 外に出して! 自由が欲しいの!」
それでも誘拐犯はに愛の言葉を囁いた。
しかし、その日から食事は一切与えられなくなった。
は水すらも与えられなくなった。
飢えが体を蝕み、幻覚を見始めた。
痩せ細り、死にそうになった頃、
やっと与えられたのは
グラス一杯の赤い液体だった。
甘く、熱い液体。
それを飲んだ瞬間、体に火が灯った。
力が湧き、視界が鮮明になった。
鏡を見ると、の瞳の色は
あのグラスに入った液体と同じ
赤い色に変わっていた。