第1章
はこれ以上、考え事をしないように
自分を忙しくさせることにした。
昼間は部屋にこもり、本を読んだり、新たに勉強を始めることにした。
古い言語の本を開き、図書室から借りてきた哲学書をめくる。
集中すれば、ヴラドの影が少し薄れる気がした。
食事は、使用人たちと顔を合わせないようにした。
本来、吸血以外の食事は嗜好の部類——必要ない。
セバスチャンがトレイで持ってきてくれるスイーツを、部屋で一人静かに味わうだけ。
皆の心配する視線を避けたかった。
自分の渇きが、いつ暴走するかわからない不安から。
夜は、セバスチャンと一緒に過ごす。
彼が訪ねてくるのを、は待つようになった。
ある夜は、激しく抱かれる。
セバスチャンがを押し倒し、唇を奪い、体を貪る。肌を強く吸い、奥深くを激しく突く。
は喘ぎ、爪を立て、血を吸い、狂おしく愛し合う。
汗と体液が混じり、部屋に熱い吐息が満ちる。
それは体が溶けるような、激しい幸せ。
別の夜は、優しく抱きしめられるだけ。
セバスチャンがベッドに横たわり、を胸に抱く。
首筋を差し出し、血を吸わせ、髪を撫で、キスを優しく重ねる。
言葉少なに、ただ温もりを分かち合う。
は彼の胸に耳を当て、心臓の音を聞きながら眠る。
それは心が安らぐ、穏やかな幸せ。
どちらも、にとってはかけがえのない時間だった。
セバスチャンの血と体が、渇きを抑え、心の隙間を埋めてくれる。
ヴラドの影を、忘れさせてくれる。
しかし、その夜がセバスチャンの腕の中で眠りについた頃。
屋敷の外、霧深い森の奥では月明かりにの中に1人の影が伸びていた。
深紅の瞳が、遠く屋敷を見つめる。
「……やっと、君の匂いがするよ、。もうすぐだ」
その男の訪問の時が、近づいていた。