第1章
やがて、ターゲットが近づいてきた。
品があり、眼光が鋭い。
「美しいお嬢さん、初めまして。」
は微笑み挨拶をした。
会話が始まった。
は計算された距離で、純情で少し儚げな令嬢を演じた。
「私は隣国で生まれ育ちましたの。
でも、不幸な出来事があって家族を失くしてしまい……
今はシエル伯爵のお屋敷でお世話になっているんです」
男は同情した様子だった。
「それはお辛かったでしょう。
お若いのに、そんなご苦労を……
お強い方ですね」
男の表情。明らかに、に惚れている。
は目を伏せ、気を持たせるように言葉を続けた。
は仕事の話題を、それとなく振った。
「お仕事は、貿易ですのね。最近はどうかしら?」
男は少し得意げに、
「ええ、順調です。最近、新しいビジネスを始めましてね。海外からの特別な品物……かなり需要があるんですよ。」
例の麻薬のことか。
でも、まだ核心に迫るのは早い。
深追いすれば、警戒される。
彼女は微笑み、会話を軽く戻した。
「素敵ですわ。
また、ゆっくりお話ししたいですわね。
今夜は本当に楽しかったです。」
男は喜んだ。
「もちろんです!近いうちに、ぜひお茶でも。約束ですよ。」
は優しく頷いた。
「ええ、楽しみにしています。」
パーティーがお開きになり、
はシエル、セバスチャンと馬車に乗り込んだ。
シエルが静かに聞いた。
「……どうだった?」
は微笑み、
「新しいビジネスを始めた、って言ってたわ。
麻薬のことだと思う。
また会う約束、取り付けた。」
シエルは満足げに頷いた。
「……よくやった。」
セバスチャンは黙っていたが
安堵と少し複雑そうな感情が混じっていた。
パーティーの夜は、静かに終わった。
しかし、闇の仕事は、まだ始まったばかりだった。