第1章
はベッドに横たわったままいつまでも眠れずにいた。
ランプの灯りを落として部屋を暗くしても、胸のざわめきが収まらない。
天井を見つめ、シーツを握りしめる。
キスなんて、男性と何度もしてきた。
それ以上のことだって、いろんな人と。
血を吸うための儀式のように、唇を重ね、肌を重ねてきた。
なのにセバスチャンの
あの柔らかく熱い唇を何度も何度も思い出してしまう。
後頭部を支えられた手の感触。
悪魔の甘い香り。
わずかな時間だったのに、胸が締め付けられるように熱くなる。
「……ただのキスなのに。」
は枕を抱えた。
彼自身も驚いていた顔が、脳裏に浮かぶ。
考えると頰が熱くなり、胸の鼓動が早まるのがわかる。
ようやく疲れが勝ったは浅い眠りに落ちた。
──翌日、午後。
シエルは執務室で時計を睨み、苛立っていた。
「はまだ起きてこないのか?」
紅茶のカップを置き足を組む。
ようやく事件が落ち着き、チェスの対局を楽しみにしていたようだ。
セバスチャンが傍らで静かに紅茶を注ぎ、
「坊ちゃん、様は昨夜お休みが遅かったようです。もう少しお待ちくださいませ。」
シエルは鼻を鳴らした。
「……様子を見てこい。起こせばいい。」
セバスチャンはの部屋へ向かった。