第1章
は疲れた体を引きずるように自室へ戻り、ドレスを脱いで寝支度を済ませた。
ベッドに入ったところで、静かなノックが響いた。
「様、失礼いたします」
入ってきたのはセバスチャンだった。
銀のトレイに、温かいハーブティーを載せている。
「寝る前にお飲み物を。お疲れだったでしょう。」
は体を起こし、ティーを受け取った。
「……ありがとう」
セバスチャンは傍らに立ち、穏やかに言った。
「今夜は、ずいぶん楽しそうに話されていましたね。」
はカップを口に運び、軽く笑った。
「楽しそうに見えたなら、私は女優になれるわね。」
セバスチャンの瞳が少し細まる。
「あの方の血は、味わなくてよかったのですか?
かなり熱心にアプローチされていたようですが。」
はイラッとした。
嫌味のように言われる態度が、気に食わない。
「……どういうつもり?
そんなこと、言わないでよ」
セバスチャンは表面上、頭を下げた。
「失礼いたしました。」
はカップを置きため息をついた。
「確かに、あなたの血をもらえる立場なのに、
あの日、人間を味わいに行ったのは……裏切るような行為に思えるのかもしれない。
でも、そんな約束、元々してなかったわよね?
私の勝手でしょう?」
セバスチャンはただ黙っていた。