第1章
燕尾服のまま、いつもの優雅な姿勢。
だが、声に微かな棘がある。
「今日は、何をしていたのですか?」
は本を閉じ、ベッドに座ったまま答えた。
「……久しぶりに、出かけてきたわ。
買い物したり、街を歩いたり」
セバスチャンは静かに近づき
「酒を飲み……人間を、味わってきたのですね。」
不機嫌そうに少し冷たく目を細めた。
「……そうだけど、何か悪かった?」
セバスチャンは睨むような視線を向けてきた。
「私の血では、満足できないのですか?」
その態度には苛立った。
「……そうかもね。」
セバスチャンは一瞬、動きを止めた。
だが、すぐに平静を取り戻す。
「そうですか。それでは、おやすみなさいませ」
そう言って部屋を出て行った。
扉が静かに閉まる音が、妙に大きく響いた。
はベッドに倒れ込み、枕を抱えた。
モヤモヤする。苛立つ。
なぜあんな態度を取られたのか。
なぜ、自分が意地を張ってしまったのか。
本当は、セバスチャンの血が欲しかった。
なのに、素直になれなかった。
「……ばかみたい」
は毛布をかぶり、目を閉じた。
渇きは抑えられているのに、心が満たされない。
モヤモヤしたまま、眠りに落ちた。
その夜は、いつもより少し冷たく感じられた。