第1章
屋敷の住人たちが寝静まった深夜。
は部屋で本を読んでいた。
セバスチャンの血のおかげで、
渇きに飢えることもなくなっていた。
静かなノックが響き、セバスチャンが入ってきた。
整えられた燕尾服と、いつもの優雅な微笑み。
「様、お休みの前にお邪魔いたします」
は本を閉じ、首を傾げた。
「……今日は、お願いしてないけど?」
セバスチャンは袖をまくり、白い腕を差し出した。
「いかがですか?遠慮なさらず、どうぞ」
は少し戸惑った。
「……そうね。せっかくだから、頂くわ」
は彼の手首に唇を寄せ、牙を刺した。
熱く甘い悪魔の血が、喉を滑り落ちる。
体が優しく満たされ、心地よい痺れが広がる。
吸っている間、セバスチャンの息がわずかに乱れる。
彼も、感じている。
なぜかそれが、には嬉しかった。
十分に吸い終えたは血を拭う。
「……ありがとう、セバスチャン」
セバスチャンは袖を直し、意外な言葉を返した。
「こちらこそ、ありがとうございます、様」
は目を丸くした。
「……どうして、あなたがお礼を?」
セバスチャンは微笑みを深めるだけだった。
は頰を赤らめ、視線を逸らした。
「……変なの」
セバスチャンは軽く頭を下げ、部屋を出た。
「おやすみなさいませ、様」
扉が閉まりはベッドに横たわる。
体は温かく、心も穏やかなまま
深い眠りに落ちた。