第1章
ファントムハイヴ屋敷での日々が、10日ほど過ぎていた。
の存在は少しずつ屋敷の日常に溶け込み始めていた。
その日の食堂では、メイリンとフィニアンがを無邪気に褒めていた。
「お嬢様、お肌つるつるで本当に綺麗です! どうやってお手入れしてるんですか?」
は照れくさそうに微笑み、
「ありがとう。でも、夜にしか外出しないから、日焼けしないだけかも」と軽く返した。
バルドが大皿を運びながら、豪快に笑った。
「ハハハ! 夜しか出ねえって、まるで吸血鬼みたいじゃねえか!」
一瞬、テーブルが静まり返った。
シエルは紅茶を啜りながら、口元に薄い笑みを浮かべている。
セバスチャンが優雅にフォローした。
「バルド、冗談はほどほどに。
様は体調の都合で日光を避けているだけです。」
バルドは慌てて頭を掻き、「す、すまねえ!」と謝った。
はくすりと笑い、
「気にしないで。面白い冗談だったわ」
と皆を安心させた。
午後、は執務室の近くを通りかかった。
扉が少し開いており、中から厳しい声が聞こえてくる。
シエルは家庭教師から様々なレッスンを受けている様子だった。
若き当主として、休む間もない教育。
は少し感心しつつ、立ち去ろうとした。
するとレッスンを終えたシエルが廊下に出てきた。
「……、暇ならチェスに付き合え」
は微笑んだ。
「ええ、もちろん。」
執務室のチェス盤で対局が始まった。
今日はシエルの読みが鋭かった。
が深く考え込んでいる間に、彼が鮮やかに詰みを決めた。
「……チェックメイト」
シエルは満足げに椅子に背を預け、得意げな笑みを浮かべた。
「今日は僕の勝ちだ」
セバスチャンはくすりと笑い
「坊ちゃん、素晴らしい手でした」と褒めた。
は悔しそうに唇を尖らせ、
「……負けたわ。でも、楽しかった。また明日ね。」
シエルは鼻を鳴らしながらも、
「ふん。当然だ」と上機嫌だった。