第1章
ファントムハイヴ屋敷での生活が数日経った。
は少しずつ、屋敷の住人たちと打ち解け始めていた。
朝の食堂では、と使用人らが
楽しそうに会話を弾ませていた。
は自分を受け入れてくれた皆の優しさに、
照れながら感謝していた。
「……ありがとう。みんな、優しいわね。」
使用人たちも嬉しそうな表情をしている。
ある午後、は図書室でシエルと再会した。
彼はチェス盤を前に、独りで盤面を睨んでいた。
「……また来たのか」
シエルは冷たく言ったがは気にせず近づいた。
「チェス? 私も少しできるわ。一緒にどう?」
シエルは一瞬眉をひそめたが、黙って頷いた。
対局が始まった。
シエルは天才的な読みで攻め立てる。
対し、も劣らずの戦術だった。
盤面は長引き、静かな緊張が図書室を満たす。
紅茶を運んできたセバスチャンは傍らで見守っていた。
やがて、が最後の手を指した。
「……チェックメイトよ」
シエルは盤面を睨み、悔しそうに舌打ちした。
「……負けた」
頰がわずかに赤らみ、苛立っているのが伺える。
セバスチャンはトレイを置きくすりと笑った。
「坊ちゃん、珍しいお姿です」
シエルは睨み返す。
「黙れ、セバスチャン」
は目を細めて微笑んだ。
「また対戦しましょう? 」
「ふん、また明日だ。次は負けない。」
は椅子から立ち、軽く伸びをした。
「それよりスイーツ食べたいわ。
今日のタルト残ってるかしら?」
セバスチャンは優雅に頭を下げた。
「もちろんです様。すぐにご用意いたします。」
夕食後、は客室に戻る前
廊下でセバスチャンに声をかけた。
彼は立ち止まり微笑んだ。
「おやすみなさいませ、様。」
は少し頰を赤らめ、小声で尋ねた。
「……今日、お願いできる?」
セバスチャンは頷き、静かに言った。
「もちろんです。お部屋で少しお待ちを。」
は部屋へと戻った。