第1章 彼はあの子の王子様
すると隣の席の小牧教官がテーブルに突っ伏して体を震わせていた。
明らかに笑っている。
時折り吹き出して笑っている声が聞こえるもん。
堂上教官も我慢しているみたいだけど、肩が小刻みに震えている。
「何がおかしい」
あ。
声に出てた。
「すまない……。あまりにもお前たちのやり取りがな……」
「くっ、ふふ……、ちょ、お腹痛い……」
もういい。
好きなだけ笑うがいい。
不貞腐れてご飯を頬ばる私に、先に笑いが治まった堂上教官が口を開いた。
「さっき笠原がコレを落としたから、後で渡してくれないか」
その手には一枚のはがきが握られていた。
食堂を後にする時に落としたようだ。
中身は読まなくてもわかる。
郁が地元の両新に書いたものだ。
「………中身、読みました?」
「いや」
「じゃあ、申し訳ないですが捨てていただいてもいいですか。郁……笠原もたぶん同じことを言うと思うので」
「……俺が触ったからとかそんな子供じみた理由でか?」
「違いますよ。そんなくだらないものではないです」
ただ……。
そう続けて私は口をつぐんだ。
これは他人の私が言う内容ではないと思ったから。
でも捨てて欲しいと思ったのは本当。
私がコレを受け取ったらきっと郁に渡す気がする。
私にとっての良心がそうするから。
でもそれは郁にとっては嬉しくないものだともわかっている。
だから、事情を詳しく知らない人に処分してほしいと思ったんだ。