第1章 彼はあの子の王子様
「聞いたわよ、早乙女。あんたも男子に混じって23位だったんだってね。すごいじゃない」
「ありがとう。でも、最後少し気緩んじゃってさ。私も堂上教官に怒鳴られたよ」
「あんたら二人、期待されてるのねぇ」
「はそうかもしれないけど、あたしは絶対それあり得ない!!」
「あたしはあの人結構好きだけどね。ちょっとかっこよくない?」
柴崎の言葉に郁は「はぁ⁉」と声を荒らげる。
眉間に深い皺を寄せ「どこが!?あんなチビ!!」と愚痴るあたり、今日はいつも以上に腹を立てているのだろう。
というか、教官に向かってチビって……。
確かに堂上教官は男性の平均身長170㎝より少し低いけれど。
女性の平均身長を有に超えている郁がそんな事を言ったら、大抵の男性はチビなのでは……と思ったが、ごくりと口に含んだ白米と一緒に飲み込んだ。
「お前たちの俺に対する評価はよくわかった」
その時、郁の後ろを偶然なのかわざとなのかはわからないけど話題の人物が通った。
鋭い眼光で私たちを見る堂上教官に、私も郁も身体が固まる。
「"チビで性格の悪いクソ教官"……。俺も人間だからたまたま耳に入った罵詈雑言が指導に影響しないとは言い切れんが」
なぜ、教官がここにいるんだろう。
今の時期、新隊員がこの食堂を使用することが主で士官は隣の食堂を使うのが基本なのに。
「あたしは褒めてたから関係ないですよね~♡」
甘えたような声で保身に走る柴崎。
すごいな、こいつ。
簡単に友情を捨てたぞ。
この場を早く立ち去りたい郁は、がつがつとご飯をかきこんでいる。
なんだか私も居心地が悪くなってきたな。
できるだけ早く食べて立ち去ろう。