【aph】セカイはいつか飽和して【dc】【prsk】
第1章 邂逅事変
︎︎やの
「夜乃さん、でしたっけ?」
「え?」
︎︎僕の視界に突然入ってきたのは黒髪の男だった。年齢は高校生、いや、20代と言われればそう見えるし、40代といえばそうとも見えるような気がする。
(なんでこの人が僕に?)
︎︎そう思ってはいても返事しない理由にはならないと、僕は静かに頷く。
「……はい」
「そうでしたか。先程の事件は大丈夫でしたか?」
「……大丈夫です」
︎︎同じ日本人だ。大丈夫と聞かれたなら大丈夫しか返すことがないのはよく知っていると思う。
「……」
「……」
︎︎この人もさぞかし困ったことだろうね。僕なんかどうでもいいからさっさとコナンとかのところに行ったらいいのに。
(馬鹿みたいだ)
︎︎それでもこの人は1つも離れることはなく、むしろしゃがみこんだ。
「……?」
(どうしてしゃがみこむの?)
︎︎まるで僕と目を合わせるためにも思えたし、話すことはできなかった。
「怖かったですね。嫌なものを見せてしまいましたね」
︎︎この人から出てきたのはそんな言葉と優しくて暖かい手だった。
「……」
(暖かいな。この人の手……)
︎︎今までそんなこと思ったこと無かったのにどうしてそんなことを思ったのか分からない。優しく、僕の頭を撫でるその手は嬉しくて暖かくて胸がなんだか。
(苦しい、な……)
︎︎この人は厚意でやってくれてるんだと思う。僕は見た目は小学生ぐらいの幼い少女だし。
︎︎僕は今、頭の上にある手を掴んだ。
「あ、あの……」
「どうかしましたか? ︎︎嫌、でしたか?」
「いや、そういう訳じゃ……。ありがとう、ございます?」
︎︎僕の近くでは殺人事件が起きてるのになんだか怖かった。
「……もういいです。ありがとうございます」
︎︎拒絶した思われるかもしれないけど、今の僕には本当にこれで十分だった。この人も僕のそんな感情を読み取ってくれたのだろう。優しく手を離した。ちょっとだけ、胸が空かしたような気分になった気がするけど、気のせいかもしれない。