第1章 初恋
朝から学校に行きたくなかった。
せやけど理由をばあちゃんに話すこともできない。
せやから行くしか無い。
「お前ぇ!昨日のあれは何やったんや!宿題渡しといたのに1し
か書いてないやん!!」
「宿題は自分でやれや!」
「お前やっぱあかんは!顔は良くても性格がゴミ!女やったら男の言う事聞いとき!」
「あつむの言うことなんて聞かへん」
「ほーん、せやて角名のは聞くんやなぁ」
「うっさいわ!」
顔が赤くなる。
俺には見せないその顔。
「ふたりとも、何やってん?」
「北さああん!こいつ宿題全部1しか書かへんの!!」
「お前、自分のやつは自分でせぇよ」
「ほら見た」
「俺の味方はおらんのか!!」
二人のやり取りに笑みを浮かべてしもた。
すると鏡花の後ろにスマホを見ながら腕を絡めた角名と目が合う。
「角名、重いんやけど。体重かけんといて」
鏡花はおもさに耐えようと踏ん張っている。
「あつむどっかいって。今から北さんと話する」
「はぁ!?どーいうことや。角名まで俺の敵なん!?」
「…あつむ、ええからはよどき」
そう言うとあつむは小さくなって教室に戻っていく。
「ほんで、話して?」
「私もおってええやつなん?」
「うん。………鏡花」
角名が鏡花に耳打ちする。
せやかて、口の動きは完全に見える。
ゆっくりと口が動くのをしっかりと見つめる。
すると鏡花の顔は真っ赤になって何も言わずにその場を忍者のように去っていく。
”今日の放課後、いつものとこでね”とそう口が動いとった。
「顔真っ赤なるん、かわええね」
「泣き顔はもっと可愛いですよ」
見たことがない鏡花の泣き顔。