第1章 名を呼ばう
しかし。
オフィーリアの同期であるエレンばかりか、オルオや、年長者としてその辺りの分別があるはずのグンタ、エルドまでもが彼女の事を「 オフィ」などと呼びはじめたのは、いささか問題ではなかろうか――いや。違う。そんなのは建前である。実際のところ、リヴァイは気付いてしまったのだ。
――調査兵団内でいまだに オフィーリア・ シダルを姓で呼んでいる兵士、俺だけなのでは? と。
調査兵団の長であるエルヴィンは勿論の事として、 オフィーリアが行動を共にする事が多い特別作戦班や第四分隊の面々、そればかりか彼女とはあまり接点のないはずの兵士たちまでもが、気付けば オフィーリアの事を当然のように名、あるいは愛称で呼んでいた。
ナナバ、リーネ、ニファといった女性陣は当然の如くに オフィーリアを「 オフィ」と呼んでいるし、男性陣であっても、気安いところのあるゲルガーなどは彼女を「 オフィ」と呼んで憚らない。
のに、リヴァイだけがいまだに彼女を「 シダル」と姓で呼んでいるのだ。
まあ、この事自体にさしたる深い意味はない。
リヴァイは元々結構、そのあたりの事にはあまりこだわりがないたちなので。
だが、しかし、こう……なんだろうか。この絶妙な謎の疎外感は。