第8章 置き土産
「本当なら村の連中と祝い酒を交わすとこなんだがよ。そいつはちょっと待って貰ってる。まずはこの面子で話がしたい」
囲炉裏の周りに集まった大枯、霜刃、霜降、鬼鮫に、少し下がったところでまだうとうとしている小枯を見回して雨露が口火を切った。小枯は大枯と鬼鮫の後ろでぐらんぐらんしている。
削れの程度にあった量を食べずに休めば、その分回復に時間がかかるのだろう。
「まず小枯に飯を食わせてくれ。じゃなきゃこいつの目が覚めない」
大枯が雨露を牽制した。
「まともに目も覚ましてないこいつをここに加えて話を進めるのは違うだろ」
「食って寝直されちゃ話が進まん」
雨露が面倒そうに言うのに、大枯が眉を上げた。
「小枯抜きじゃ話が進まんのだ。はき違えるな」
「どの道里を出るなら同じこと」
土間に落ちていた羽織を顔色ひとつ変えずに拾い上げ、きちんと着直して何事もなかったように括淡としていた霜刃が口を開く。
隣の霜降が驚いた顔で霜刃を見た。
「何だ、今日は話してえ気分なのか?珍しいじゃねえかよ、霜刃」
「事は俺と小枯に関わる。黙る道理がない」
「はあ?んでも小枯はまだ里を出るとは決まってねえんだろ?まずそこだよな」
霜降に雨露が厳しい目を向けた。
「別に小枯が里を出る必要はないさ。他も手も考えりゃ考えられる。けどそれには時が要る。ぐずついてられるほどの時はない。刻限は年の末、ひと月もないのに初枯の居所は一向に知れん。知れたとして繋ぎがとれるとも限らん。繋ぎをとったとして、初枯は生半な相手じゃ顔を出しゃしないだろうよ。しかもこいつはこっちの都合だけ考えて言ってるわけじゃねんだ。小枯は削られ過ぎだ。このままじゃ死にかねえない。けど里にいたら時雨は必須で、こいつは休まる暇がない。わかるかよ霜降?こいつは所謂…」
「最適解」
雨露に皆まで言わせず、霜刃が後を引き取る。
ふと大枯と鬼鮫の間を縫って手が伸ばされた。その手は炉端に積まれた平たい饅頭のようなものを二三個まとめて取り上げ、また引っ込む。
「そりゃわかるがよ。小枯も春狩りが終わりゃちっとは楽になる。そりゃ春狩りでまたかなり削れはするだろうが、今までだってそうだったんだ。後は休んで夏ちょっと家業に精を出して、秋からまた狩りをするってのは俺も似たようなことをしてるが、やっぱりそれとは違うのかね?」
