• テキストサイズ

弥栄

第10章 参の社



「私が暁に初枯の確保を依頼したのは和良と神成連を出し抜く為だ」

胡座をかいた寛いだ格好で茅場が話し始めた。
お茶を飲みながら湯飲みの淵を眺め、鬼鮫とも霜刃とも目を合わせない。

「これは私が若い頃から温めていた企みに繋がる滅多とない好機」

ここまで言って、茅場はちらと霜刃を見、口角を上げる。

「今こう話すのも暁の干柿は部外者であること、そしてお前が無口な男と見込んでのことだ。霜刃。他言は一切無用。何かしら漏らすようなことがあれば先々狩りも神仕えもないものと思って貰わねばならない」

霜刃は毛筋ほども表情を変えずに茅場を見返し、しかし羽織を捌いて座り直した。

話を聞く気になったか。

隣の鬼鮫を一顧だにせず、霜刃は懐で腕を組んだ。

「余儀なし」

一言。

その霜刃を見て茅場が薄く笑う。

「…そうだな。是非もないことだった。お前は小枯以外には気持ちの動かぬ一刻者、里に何のしがらみも持たぬ気でいる」

「その通り」

霜刃が平然と薄笑いする。

「それでこそだ。気が良くて聡い大枯、世故長けて山の外に繋がりのある雨露、目端が利いて人好きする霜降。そして小枯さえ絡まねば全てを平らかにただ観るだけの霜刃。今が今、お前たちが狩りの上組にあるのは正に僥倖」

ここで茅場は俯いて額から総髪を撫で上げた。俯いた口元に笑みが浮かんでいる。

「凍みと霜の企てに同意しよう。お前たちの企てと私の段取り、多少の違いはあれど大筋と目的は同じようなものだ。初枯の起こした騒ぎに乗じ、経巡を変革する」

「それをどう信じろと言うのです?あなたがいうところの段取りを凍み鎌や霜鎌に理解されなければあなたが何を言おうと意味がない。私はどうだって構いやしませんがね。金で雇われただけの部外者ですから。しかし何かしらやりおおせようというなら今のあなたの回りくどさは全くの蛇足。聞く必要のない話だ」

まるきり本音で言って、鬼鮫は内心ちょっと笑った。
大枯を嫌いとは言わない。雨露も面白い男ではある。心意気は買わないでもない。だが、どうでもいいことだ。

小枯さえ一緒に山を下りてくれるのならば後はどうでもいい。その為だけに今ここにいるのだ。

「では何故お前はここにいると聞いたら話が長くなるかね?私もお前も自分の話ばかり始めたらいよいよ霜刃が退屈する」

茅場に言われて鬼鮫は苦笑して顎を撫でた。

/ 137ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp