第7章 手筈
「小枯をどう動かすか知りたいか?まだ?」
雨露が察して驚いたような顔を作った。驚いているのではない。驚いた風を見せつけている。
「協力もしないのに手段だけ知りたい?そりゃ頂けねえや。小枯だけ搔っ攫われても困っちまうからよ」
いっそ面白くなってきた。太々しいのにも程があるが息がっている風でもない。妙な男だ。
「今大枯が話したことは起きちまったこと。それをどうするかってことだけだ」
雨露が内側に籠るような目つきで窓表を眺めた。
「その先どうするかを、俺は大枯に相談した。そこまではあんたにゃ話せない。こいつは本当に大事な話だからな。ま、あんたもお得意の関係ないで済ませちまうだろうから話す価値もないし、聞く価値もない。お互い様って奴さね」
鬼鮫は口を開きかけて止めた。雨露が半ば独語めいて話すこの流れを止めたくなかったからだ。
雨露が続ける。
「もし俺らが考えてる先のことが上手くいかなきゃ、俺も大枯もビンゴブックへ載ることになりかねないし、小枯には里に戻って貰わねばならん。逆に俺と大枯は恐らく里を出て逃げ回ることになるな。こっちも高みの見物を決め込んであんたに何もかも押し付けようってんじゃない。そこは勘違いして欲しかねえ」
「…何をしようとしてるんです?」
鬼鮫の問いに雨露は我に返ったように顔を上げた。
「それは今のあんたにゃ言える筈もない。だって関係ないものな、あんたは」
「俺たちは里を豊かにしたいんだ」
大枯が雨露を遮って胡坐をかいた膝に手をついた。
「今より金持ちになりたいって話じゃない。和良に頼らないでもいい里にしたい。里の富を等しく分け与えたい。…今は参の牟礼に偏りがある状態だから、それをまず三つ山に等しく分けて里を潤したいんだ」
伐採権のある神成連、初枯のいた参の牟礼。成る程。
「初枯さんとやらの起こした騒ぎに便乗して里を変革したいと、そういう話ですか」
それに失敗したら小枯の齎す時雨の恩恵は里の”必要”から外れることが出来ない。そうなれば小枯はどの道里に戻ることになる。折角里を出ても元の木阿弥だ。
小枯を里から切り離したいが、この確信のない話にのる気にもなれない。鬼鮫が応と言わなければ詳しい事情が知れないのなら、ここで判断はしかねる。
鬼鮫は立ち上がった。
「少し考えさせて下さい」