第7章 手筈
あり触れた話だ。
大枯の話を聞き終えた鬼鮫はむしろ反応に困った。
馬鹿な大名と馬鹿な里長の馬鹿なやりとりが馬鹿な結果を生んだ。初枯とかいう男は、むしろいいところに目をつけた。褒めてやりたいくらいだ。このまま逃げおおせるなら更に見所がある。
「退屈な話だったろ」
雨露が笑う。
「あんたにとっちゃ別に面白くも何ともない話だ。俺があんただってそう思う」
「私はこの里の人間ではありませんからね」
鬼鮫が薄笑いで返すと、雨露は膝を叩いて更に笑った。
「あんたにも里があるのか?帰れる里か?違うだろ?なら簡単に言ってくれるなよ。想像力ってヤツがねえな、あんた」
「そっくりそのままお返ししますよ。私に帰れる里があったらどうします?見た目で人を判断するもんじゃありませんよ。想像力が足りてないのはどちらです?」
「そら失礼した。けどな。よく考えてみてくれよ。あり触れた下らないことでも、丸く収めるのがどんなに難しいか」
「…何が言いたいんです?」
「あんたならどうするかなと思ってさ。どうすれば丸く収められる?」
鬼鮫は雨露を無視して大枯を見た。まだ考え込む様子の大枯に苛立ちながら声をかけた。
「私を利用するというのは里を救うための知恵を貸せということですか?勘違いして貰っては困る。私はあなたたちに奉仕する為にここに来たのではない」
「あんたがそんな人間じゃないってのは間違いなく伝わってるから心配しなくていい」
雨露みたような言い回しをして、大枯は鬼鮫を見返した。
「先に言った通り、小枯を連れて里を出て欲しい。そして初枯を探すのに小枯を同道させて欲しい」
「私は初枯さんとやらを見つけたら譲りませんよ?言った筈です」
「だから無理を押している。譲れとは言わない。けれど小枯を連れて行って欲しい。少なくとも俺はあんたに小枯を任せられたらと思ってる。…あんたにはただただ迷惑だろうが、最初の七日、小枯が時雨を使わずに休んで削れの疲れがとれるまででいい。一緒にいてやって欲しい」
何を言っている。連れ出すなら七日どころの話ではすまさない。
問題はその連れ出し方だ。
鬼鮫は雨露を見ようとして止めた。
ー俺らなら小枯を里から連れ出すやり方を教えてやれるー
小枯の意思を無視して連れ出すことは難しいだろう。小枯自身が首を縦に振らなければこの話は進まない。
