第7章 手筈
「そのやり口を先に読まぬほど初枯は暗愚ではあるまい」
「…初枯は南天と繋ぎをとってるのか?今も?」
「だから南天に縁談が降って湧く」
「初枯をおびき寄せようってのか」
「のる程愚かか?初枯は」
霜刃がうっすら笑って小枯に問うた。小枯は眉根を寄せて霜刃から目を背けた。
「…南天は初枯を待たないのではなかったのか?」
「そうするような奴なのか?南天という女は?」
「お前は同じ神職に就くものとして南天とも面識がある筈だろう?何だその物言いは」
「知らんよ。どれが南天かもよくわからん」
「…まあいい。では南天はどうやって初枯と繋ぎをとっているんだ?お前はそれを知っているのか」
「呼子笛だ」
「呼子笛?」
「麓の里の者に都度繋ぎをつけて参の牟礼の向かい山から呼子笛を鳴らしている。向かい山は参の牟礼に近く、場所を選べば笛の音が届く」
「…成る程…」
「初枯は巧妙だ。同じ里の者に同じ用を頼まぬ。人の口の端にのぼらぬよう、幾多りもの里と人を使って南天に繋ぎをとっている」
「そんなことを頼める金子があるのか、初枯に?」
「狩りをしているのだろう。外に行って捌けば直接金になる。経巡にいるうちは叶わぬことだが、その縛りから抜けて出れば猟は金になるのだ」
「ふん。まあそうだな…。成る程。そうすれば外でも食うには困らないか?しかしそりゃ密猟だ」
「無一文で山を下りたんだ。つべこべ言ってられん」
「すぐすぐ宝珠を売り払っても足がつくだけだしな…」
「ここ数日南天は参の牟礼の社に閉じ込められているが、向かい山から呼子笛が鳴るのも止んだ。南天が閉じ込められる前に何かしらの約し事が成った証だろう」
「南天に会いに行くか」
「そして里を出る」
「…まだ言うか、お前は…」
「初枯を死なせたいのか?」
「なら私とではなく違う者と行けよ。私がその役目に最適解とは思わない」
「最適解だ」
「何で」
「俺がそう思うから」
霜刃が言い切るのを聞いて、小枯はいよいよげっそりした。
「外に行っていっぺん頭を冷やして来い。そして私を寝かせろ。そしたら一緒に南天のところへは行ってやる」
参の牟礼の社へ入るには制約がある。巫女が籠った社は男子禁制故神職の端くれである霜刃も踏み込めない。
だが、小枯は入れる。小枯はそれを許された数少ない大人の女だ。