第7章 手筈
「俺は山歩きは嫌いだ」
「それでよく狩りをしてるな。辞めろよ、霜枯を。間違っても凍みになるな、お前は」
「狩りも好まない」
「…いよいよ黙ってくれないか。私は別にお前を知りたい訳じゃないんだ。無口になれ。皆の評判通りの無口になって、取り合えずどっかに行ってくれ。話の続きは大枯か霜降とする。お前は皆の期待を裏切らず、黙って、無口に、ここを出て行け、馬鹿」
「そうか。それはまた有難う」
「だから!…ちょっと待て、目が回った。いや、いい、触るな。本当に目が回っただけだ」
触りかけた霜刃の手を払いのけ、小枯は横たわり、また目を閉じた。
何でこいつが今が今ここに来たんだ。面倒くさくて堪らない。私は今眠りたいだけだ。
間断ない疲れの訴えが身を蝕む。
「…里を出て初枯を探し出したとして、お前は初枯に何を聞き、何を言うつもりだ?」
「俺が初枯と話すと思うか?」
「何がしたいんだよ、お前は」
「話すのはお前だ」
「ならお前は要らないだろ」
「ひとりでは行かせられない」
「ひとりで行かせられないような奴に何をやらせようってんだ?そんな奴を当てにしてどうなる?」
「誰にも彼にも様々事情がある」
霜刃が小枯のげっそりした顔を見下ろした。
「今の最適解がお前。そして俺だ」
「私にはお前と組むのが最低の悪手に思えるが」
「大枯は立場上里を動けない。雨露はお前と相性が悪い。霜降は生家と仕事を愛して動かない」
「大枯はお前らと組んだのか。意外だな」
「誰とでも共謀出来る話ではない。凍み鎌と霜鎌は表裏を成す。事が起きれば手を組むのは必然」
「成る程。ではお前は大枯と雨露の遣いなのだな」
「それとは別に自分の意志で来た」
「それはこの際関係がないだろ。誰にも彼にも事情がある中で来たのがお前なんだから」
「相手がお前でなければ来なかった」
「相手が誰でも同じだよ。お前は弐の牟礼の神官になる身だ。易易と里を出られると思うか」
「思う思わないではない。出るんだ」
「…何でお前はそう何でも決めつける?もっと寛やかに生きられないのか。見てるだけで息苦しい」
「俺はお前がそうして正直にぶつかってくるのが嬉しい。だからもう一度言う。有難う」
「そうか。ならもうお前には嘘しか言わん。出て行って大枯と雨露に伝えろ。小枯は兎に角眠くて話にならんと」