第7章 手筈
「あんたが山の下でどういう生き方をしてるのか、俺は知らない」
大枯が慎重に言葉を選んで話し出した。
「何のつもりで初枯を追っかけてんのかも聞こうとは思わんよ。もし初枯を害そうとしているのだとしてもそれはあんたの事情だし、こっちの事情とは関係ない。あんたにあんたの事情があるように、こっちにはこっちの事情がある」
「それは初枯さんとやらを里に戻すことでしょう?帰ってくるといいですねえ。まあろくなことにはならないでしょうが」
「…何でそう思うんだ」
「あなたは前にお仲間には罪を償って戻って来て欲しいと言ってましたね。それがどれだけ都合のいい話だか、今からかみ砕いて説明して差し上げましょうか?」
「いいよ。わかってる。初枯は思うより厄介なことをやらかした。そうだろう?軽微な罪状にあの賞金ってのは罪を償えばすむような簡単な立場にないってことだ。裏のあることに…巻き込まれてるか、巻き起こしてるか」
考えたくなくて考えないようにしていたことを噛みしめて、大枯が苦い顔をする。
「そんな初枯が里に戻って来たりしたら、あんたみたいな奴が黙ってないってことだ」
「さあ?私みたいなものかどうかは知りませんが、賞金の嵩の分程度にはややこしいのが寄って来るでしょうねえ。今も経巡を見張ってる輩がなくもないと思いますよ?まあ私の知ったこっちゃありませんがね」
大概の賞金稼ぎは鬼鮫から見れば有象無象だ。そんな連中と競っても面白くも何ともない。
「だから俺は初枯を里に近づけないことにした」
大枯の言葉に鬼鮫は鼻を鳴らした。
「御盟友の居所も知らないあなたに何が出来るんですか?宛もなく伝書鳩でも飛ばしますか?下らない」
「里の者を初枯を探しに行かせる」
「はあ。探しに行かせたらいいんじゃないですか?その人は初枯さんの居所をご存じなんでしょうかねえ?なら是非私も同道させて頂きたいですよ。いっきに手間が省ける」
詰まらなさそうに皮肉を言う鬼鮫を雨露が楽しそうに見ている。
癇に障る顔だ。鬼鮫はすぅっとごく細く、目を眇めて雨露を見やった。
「おお。いい顔するねえ。こりゃ本物だぜ、大枯。おっかねえおっかねえ」
「止めろ雨露。茶化して話をごたつかせるな」