第2章 葉簪
話すたび大枯と鬼鮫を忙しく見比べていた小枯が凄い勢いで嫌な顔をしたのが視界の隅に入った。多分鬼鮫に気付かれているとは思っていない。
物凄く嫌そうな顔の女の、その頭の上に似合いもしない楓の葉簪。
鬼鮫はまた笑いそうになって自分に呆れた。
馬鹿馬鹿しい。
「連れて行けませんよ」
大枯が鬼鮫を見た。怒った顔をしている。侮辱されたように思ったのだろう。自分の仕事を、"素人"に。
「遊びに行くんじゃない。ー行く先に初枯もいないですしね」
鋭い声で言われて、鬼鮫は今日初めて、ほんの少し気持ちが晴れたような気がした。
大枯の呑気さが崩れた。
「連れて行かないというならそれで構いませんがね。勝手について行くまでですから」
歯を剥いて笑った鬼鮫を、視界の端の小枯が顰め面で見ている。うへぇという小さな声も聞こえる。
明らかに嫌がられている。
鬼鮫の気分がまた上がった。
獣道で気味の悪い思いをさせられたことへの意趣返しも悪くない。
「さあどうぞ。行って下さい。但しこの客は帰りませんがね」
大枯の横をすり抜けて縁側に出る。そこには嫌な顔をした小枯が近くいる。
「あなたたちが仕事なら」
小枯はまともに視界に入れない。大枯だけを見て話す。
「私もまた仕事ですんでね。そう言えばわかってくれますかねえ?」
見ないで手を伸ばし、小枯の頭から楓を摘み上げる。
鬼鮫がこちらを見ていないことにすっかり油断していた小枯が、鬼鮫の手を反射的に払おうとしたが一瞬間に合わない。
鬼鮫は指先の楓を外に落として、小枯を見た。小枯は楓と鬼鮫を見比べて、不思議そうな顔をしている。
楓が木枯しに乗って舞い上がった。