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弥栄

第6章 名乗り



大枯は村長の家の囲炉裏端で霜鎌の雨露と向かい会って座り、むっつりしていた。
炉辺の三つ目には霜刃も座っている。
ますます面白い面子ではない。

霜鎌の雨露は代々狩りに携わってきた生粋の猟師の家の出だ。
若いうちに一度里を出て外で暮らしていたものが出戻って猟師になった為、里の狩りに携わるようになったのは遅い。
外で揉まれただけあって世故長けて、世渡りが上手い。

霜刃は弐の牟礼の神官の息子であり、兎に角無口だ。
無口で女嫌い、頭は切れるが話さなすぎてその頭が周りの為に役立たない。
ひょろりと細長いくせに肩腰の力が強く、腹立たしいことに狩り向きだ。が、話さなすぎて連携がとれるようになるまでが長い。
面倒な男だ。因みにこいつも初枯同様女にはモテる。嫌な男だ。

霜のもうひとりは霜降。
口も態度も軽いが兎角すばしっこく目端が利く。壱の鎌向けの男だ。
小枯と同じく食べ物を商う家に生まれ、霜鎌と大工を兼業しながらやはり小枯同様未だ家業を手伝っている。
付き合い辛くはないが如何せん霜鎌、けして親しい仲ではない。

今の霜は癖が強い。

「そんな嫌な顔をするな。謝り辛くなる」

雨露が最もらしく言うので大枯は呆れた。

「今更何を謝るってんだ。お前らが狩りの邪魔をするのは今に始まったことじゃないだろ」

「熊は兎も角猪に関しちゃ凍みと霜は獲物が被ることもある。お前も知っとろうが」

「あんな大猪をお前らの狩る若猪と一緒にするな」

「猪は猪よ。霜にも狩る権利がある。お前らも兎や鹿を狩ることがあろうよ」

「それは籠って狩りをするときの食料か、熊を誘き出すための餌用だ」

「しかし狩るのだろう?霜の獲物を?」

面倒な。大枯は遠慮なく嫌な顔をして炉縁に置いたお茶を飲んだ。雨露が笑う。

「まあいいさ。わしもお前に文句が言いたくてここにおるんじゃない」

「ああ、そういや謝りたかったんだったな?しかしそりゃお門違いだ。謝るなら小枯に謝れ。たんと肝を携えて小枯に詫びたらいい」

「肝ばかり食わせては偏るぞ」

「偏るほど食わせてやれりゃ世話ないわ」

「小枯の体は悪いのか?」

「見た通りだ。だんだん削れた分が戻り辛くなってきて、いつも疲れてる」

「よくないな」

雨露がまた最もらしく言うのに、今まで身動ぎひとつしなかった霜刃が初めて頷いた。

…こいつら、何しに来たんだ?
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