第4章 五ン合
「あんたが話し易いからじゃないか?」
「聞き返してどうするんです」
「いやだって、何でそんなこと聞くんだ?また何か悪いことでもいったかね?それなら謝らないでもないが何か謝りたくないのは何でだろうな…」
「それは私を侮ってるからじゃないですかね」
「侮る?何で?あんたの何処に人に侮られそうなとこがある?…まあ怖がられることはありそうだけどな」
「人がどうこうじゃない。あなたの話をしてるんですよ」
「私は人じゃないってか?いきなり凄いこというな、あんた。悪かったな、人外じみてて。朝飯のときどん引いてたろ。まあありゃ不測の事態の結果だからな。忘れろ。忘れて山をおりなさい」
「確かにあの朝食は尋常じゃありませんでしたがね。そういう話じゃありません」
「そういう話じゃない話が好きだな?ならどういう話は嫌いだ?こういう話じゃない話か?ああいう話じゃない話か?」
「いよいよ理屈っぽくなってきましたね。付き合い辛さにかけてはあなたはどうやらオールラウンダーのようだ」
「おお、いいね。けど私はクライマーでリードアウトだ」
「…何でロードレースなんか知ってるんです?凄い違和感なんですが」
「外に出なくもないって言ったろ。因みに私は競馬が好きだ。是非馬にのってみたい。熊や鹿にのるのは飽きた」
「足柄山の金太郎は鉞もって狩りをしてればいいんですよ」
「それに飽きたって言ってるんだよ。話がわからない奴だな」
「飽きたなら外に出る理由がなくはないんじゃないですかね。それが弱い動機だとも思えない」
「飽きて投げ出すのは子供のやることだろ。私はいい大人だ」
「いい大人には見えませんがねえ…。あなた自分の寝相の程をご存じですか?」
「何だ。今度は寝方に文つけようってのか」
「誰かに何か指摘されたことはない?」
「?ない」
「あなた、馬鹿みたいな寝方してますよ」
「…え?」
「凄いですよ」
「何が…?」
「寝相が」
「いやちょっと待て。…そんなに凄い寝方してるのか?」
「あなたを寝かせたら部屋中の汚れがとれるでしょうね。ルンバだってあなたほど熱心に部屋中動き回りませんよ」
「部屋中?」
「転げ回っちゃ人にぶつかり、寒くなれば炉端も人も見境なくくっつく、暑くなれば邪魔だとばかりに蹴る肘をくれる、土間に落ちる、這い戻ってまた落ちる」