第4章 五ン合
痛いように眉を顰め、何か言いかけて俯く。
「…そうだな。あんたの言う通りだ」
また素直だ。素直が出た。
全くよくわからない。
「傷つくくらいなら始めから言わないことですよ。自分の発言は自分に還って来る。言葉には責任を持ちなさい」
「御説ご尤も」
「…ふざけてるんですか?」
「何でふざけなきゃいけないんだ?御説ご尤もくらい言わせろ。何なんだ、お前」
「お前?あなたにお前呼ばわりされる覚えはありませんよ」
「あんたはよくてお前は駄目?ちょっとよくわからない…」
「わからないのはあなたですよ」
「あんたとお前の違いか?どっちも雑だがお前はあんたより雑になるかな。相手との親しみの深さにも依る。あんたとは親しくないからより雑に扱ったことになるか?…すると、ああ、あんたは私に雑に扱われる謂れはないって話をしてる訳だな」
「…意外に理屈っぽいんですねえ」
「理屈っぽくなくて猟が出来るか。動物と人間の理屈の積み重ねが猟だぞ」
成る程。それは人を狩るのも同じ。
内心呟いて鬼鮫はまだ考え込んでいる小枯を見下ろす。
馬鹿ではないらしい。
「そうするとあんたはお前は嫌だがあんたは構わないと」
「…誰がそんなこと言いました?」
「お前では怒ってあんたでは怒らない。てことはあんたなら構わないと思われて当然じゃないのか」
「黙ってるからって肯定してる訳じゃありませんよ」
「親しくもないくせに黙っててもわかって貰おうってのか?図々しいな」
「…親しくもない相手に食べ物をねだったり、寝てる自分を担がせて山道を歩かせるあなたが何だって私に図々しいなんて言うんですか…」
「ああ、そりゃそうだな。失礼した」
「ふざけてるんですか?」
「だから何なんだよお前は。失礼したも駄目か?面倒くさい奴だな」
「面倒くさい?それをあなたが私にいってはいけない理由も論いましょうか?」
「言いたきゃ言えばいいけど、途中で寝ても怒るなよ。お前が勝手に言い出したんだからな」
「これで三回お前呼ばわりしましたね?言っときますが私は優しい質じゃない。いい加減にしないと痛い目に合わせますよ?」
「お。何だ。脅すか」
楽しそうにハハと笑って、小枯は額にかかった後れ毛を掻き上げた。
「安心しろよ。誰もあんたを弱いとも優しいとも思っちゃいないから」
鬼鮫が眉を上げる。