第4章 五ン合
欠伸をして、小枯はまた体を反した。
鬼鮫の肩にぶら下がって目を閉じる。
「人の幸せを見るのはいいことだ。自分も幸せになる。辛そうな人を見れば辛くなるのと一緒だ。沢山の幸せと辛さが里の中だけでも溢れてる。外にいったらもっと色んなものが溢れてるんだろう?世界は広い。私はちっぽけだ。面白いことだな」
完全に独語だ。鬼鮫に聞かせようとして話していない。
鬼鮫にこんなことを話す意味がないのは、小枯も鬼鮫もわかっている。
だからこれは、本当に小枯の独語。そして無意味に漏れ出している本音だ。
「私は大枯くらい大きな人間が他にいるとは思いもしなかった。けどあんたがいた。私は井の中の蛙だ。でもそれが不幸せでもない。愉快なことだと思わないか?」
部外者で通りすがり、そういう鬼鮫にだからこそ取り留めなく話している。そう思えた。相手は誰でもいい。深く関わらず、通り過ぎていくものなら。
流れ弾に当てられたような気がして鬼鮫は苛立った。振り落としてやろうかと思ったが、そうしたところでこの女は大して傷付かないだろう。
「…寝る」
ぽつりと呟きを残して、小枯の体から力が抜けた。
肩に掛かる重みが増す。
鬼鮫は息を吐いて小枯を抱え直した。