第3章 小枯
その時にはもう、小枯は手を振り下ろしていた。
小枯の筋肉質の細い腕の先、夕飯作りの為に手甲を外したがっしりしているが小さなその掌から冷気と共に何かが流れ出た。
鬼鮫は目を見開いた。
水か?いや、違う。水ではない質感がある。氷?それにしては流れすぎる。
熊が小枯の掌から溢れた何かに押されてふらついた。まともに鼻先から被った為に動揺したのだろう。鼻先は熊の急所、そこへ"何か"が直撃した。
小枯が大枯のそば、野小屋側に転がった為に、それを追った熊は大枯の真ん前にいる。大枯が躊躇いなく熊の盆の窪に槍を突き立てた。
熊が咆哮を上げ背を伸ばす。
「どけ、大枯!」
小枯が木から熊の胸元目掛けて飛び降りた。大枯が槍を抜いて飛び下がる。
熊が後ろ向きに倒れ込んだ。
その上に踏ん張って立つ小枯が、また咆哮を上げた熊の口の中に懐から出した小太刀を腕ごと突き立てた。
熊の口からガバガバと血が湧き上がる。
「小枯!」
大枯が駆け寄って熊の目を槍で貫いた。息絶えた熊の口に手をかけ、力任せに抉じ開ける。
腕を解放された小枯は、そのまま崩折れて気を失った。