第3章 小枯
小枯の表情が動いた。眉を顰めて首を振る。
「人に簡単に名前を言うもんじゃない」
パチンと目を覚ましたように感情を取り戻した小枯が鬼鮫を正面から見据えた。
「自分を安売りするな。大事にしろ」
いつの間にか取り落としていた葱を拾い上げて、小枯は鬼鮫を置き去りに野小屋へ戻った。
腰の上で括り髪がが跳ねる。触れば多分、冷たくて滑らかなあの黒髪。
鬼鮫は小枯を見送って満天の星空を見上げた。
我の吐き出した白い息が立ち昇って夜空に吸い込まれるように消えていく。
ふっと笑って、鬼鮫も野小屋へ向かった。