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弥栄

第10章 参の社



「…猪狩りに同行してくれた人だ」

「ではあの方も狩りをなさるんですね」

稲穂に無邪気に問われ、小枯はひと息飲んで呼吸を止め、すっと目元に笑い皺を寄せた。

「ー多分な。狩りをする人間だ」

本当のところはわからない。が、初枯を追う賞金稼ぎなら強ち間違いではないだろう。
鬼鮫からは、狩りをする人間に近い匂いがする。

「凍みに入られるのかしら?初枯様の代わりに」

「稲穂」

初音が遮って、稲穂は気まずそうに口を噤んだ。

「小枯」

笑みを浮かべて稲穂と初音のやり取りを聞いていた南天が小枯を呼んだ。

向き直った小枯を南天は手振りで座るよう促した。

「本当によく来てくれました。待っていたのよ」

床板に端座し、背筋を伸ばした小枯は南天を見て微かに眉根を寄せた。

「…私の用向きをご存知か?」

「知っていると思いますよ。そうであれと思っています」

「そうであれば話は早いと言いたいところだが」

小枯ははっきりと眉間に皺して南天を注視した。

真意を計りかねる。

どういうつもりでいるのか。

「小枯。これは参の社の総意です」

南天に言い放たれて小枯は目を眇めた。

「あなたは私の代わりに本巫女としてここに残るのです」

「…は?」

後ろで稲穂がくすくす笑い、初音が嗜める声がした。
くらくらと揺らぐ燭明の中、南天が嫋やかに笑っている。

御扉がガタガタ鳴り、表の空合が変わったことを報せている。

小枯は呆然と南天を見た。

蝋燭が揺らぎ、御扉が鳴り。

小枯は目を閉じた。














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