第9章 霜刃
「用のない人と揉める気はありませんよ。その心配はネジの外れた元お仲間にした方がいいんじゃないですかね」
振り向いて小枯の様子を見てから、鬼鮫は3人を見回した。
「ふたりで行かせると行っていましたが、万が一あの男が小枯を連れて逃げでもしたらあなたたちの企ては完全に瓦解するし、凍み鎌も霜鎌も壊滅状態になるでしょう?ふたりを行かせている間に少しでも狩りをしたかったのかも知れませんが、私からすれば考えなしとしか言いようがない」
誰も言い返して来ない。
「別にあなたたちの為に行く訳じゃないですから一向に構いませんがね。礼を言われてもいいくらいのものだ」
「霜刃はそんなこたしねえよ」
霜降がぽつりと言った。
「あいつは何を考えてるかよくわからねえ奴じゃあるが、小枯が嫌がることを無理くりすることだけは絶対しねえよ。…俺から見たって、霜刃が正真小枯を好きだってことだけはよくわかるもの」
鬼鮫は霜降を一瞥して立ち上がった。
「休ませて貰います」
炉で炭が崩れて微かな音を立てた。
「雪にならなきゃいいな」
雨露の呟きを最後に、その晩は、もう誰も何も話さなかった。