第1章 あの夜の続き
「歩ける?」
「しんどいかも」
頭がふわふわして足もおぼつかない。彼にもたれかかったまま。こんな歳になってお酒に潰れるなんて。
店を出て適当にタクシーを捕まえて乗り込む。
湊斗のアパートに着くまで私の手を湊斗は握って、それが心地よくて満たされるようなそんな気持ちになる。
私はまだ、彼のことが好きなのかもしれない。正直会えたのは嬉しかった。こうして部屋に行けるのも嬉しかったりする。ほんとに単純な女だ。
アパートの前で下ろしてもらって、湊斗に支えられながら部屋まで歩く。鍵を素早く取り出してカチッと音が鳴る。
扉を開けると彼の匂いが立ちこめる。懐かしくなって少し泣きそうになった。
「適当に座ってていいから。お水飲む?」
「うん。飲みたい」
そういわれソファーに遠慮なく腰かける。湊斗は水の入ったコップを私に渡してくれた。こんな気遣いができるところが私は好きだった。付き合いが長くなるにつれ蔑ろになっていたけれど、久しぶりに会って彼は変わったのかもしれない。
水を少しずつ飲む。飲み終え、羽織っていたジャケットを脱ぐ。私の脱いだジャケットを彼は受け取り、シワにならないようハンガーにかけてくれた。
「ありがと」
「いいよ」
それから沈黙が流れる。そういうムードになっているのが嫌でも分かった。
湊斗も私の隣に座る。私の目を見つめ、優しい手つきで私の頬を撫でる。まるで壊れ物を扱うみたいに。