第1章 久しぶりのティータイム
そうやって笑う時には雅が何かを隠している時だというのが本人は自覚がないらしい…しかし友人としてのジュンスにはすべて解っていた。
「…ーーッ」
震える携帯。しかしすっと画面を下にして伏せてしまった雅にジュンスは問いかける。
「…電話?」
「違う。ただのラインだから…」
「見ないの?」
「放っておいて大丈夫」
「……もしかして彼氏?」
「……ん」
「僕居てもいいだろ、電話でもないのに」
「…今は見たくないの」
「珍しいな」
…そうじゃないのは…解っていた。『何かあった』証拠だ。
「…喧嘩でもした?」
「してないよ?」
即答が返る。喧嘩は本当に何のだろうとジュンスも考えた。
「…でも、何かはあったんだ?」
「…最近ちょっとね」
フッと漏らす雅の寂し気な声色にジュンスは少しだけ目を細めた。
「…でも、大丈夫だから。心配はしないで?今はジュンスとのティータイムに集中したいだけ」
「…そう?」
『嘘ばかり』…と呟きたくなる気持ちを抑えてジュンスは届いたばかりのコーヒーに口を付けた。
「おいしい、このケーキ」
「クス…甘いの食べたら笑顔になるって、子供だな」
「…うるさい、」
「はいはい」
小さく笑う二人。しかしそんな時だ。
ヴーー…ヴーー…
明らかにメッセージではないバイブ音。すっと拾い上げれば小さくため息を吐いた。
「…出たらいいのに」
「やだ」
「…どうして?」
「……深い意味はない」
「全く…」
一旦静かになるものの、追い打ちをかける様にもう一度着信が入る携帯を持ち上げれば雅は耳に押し当てた。