悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第16章 神楽坂蓮と『氷の薔薇』
ユリウス様が戻ってきた瞬間、医務室の扉が開き、白衣をまとった先生が姿を現した。
「さて……どれほどの怪我か見せていただこう」
先生は私の足首を見て、眉をひそめた。
「これは……酷い腫れだ。風の刃を受けた痕跡が残っている。
こんな状態で舞踏会を続けるなど、正気の沙汰ではない!
放置すれば歩行障害になっていたかもしれないのだぞ!」
厳しい声が医務室に響き渡り、私は思わず肩をすくめた。
「……申し訳ございませんわ」
令嬢の微笑みを浮かべながらも、心の奥では冷や汗が流れていた。
先生は回復魔法を施しながら、さらに言葉を重ねる。
「君はローゼン家の令嬢だろう?その責務を忘れてはならない。
己を犠牲にしてまで誇りを守るのは愚かだ」
その言葉に、医務室の空気が重く沈む。
――だが、その沈黙を破ったのはルシアン様だった。
「先生。彼女は愚かではない」
氷の公爵の声は低く、しかし確信に満ちていた。