• テキストサイズ

悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について

第1章 目が覚めたら


「ヴァイオレット……あなたが誰か分からなくても、私たちはあなたを愛しているわ。少しずつ思い出していきましょうね」

いやいやいや、違うんです。
私は“思い出す”んじゃなくて、“知らない”んです。
だって、私は藤咲しおりであって、ヴァイオレットじゃないんだから。

でも、ここで「実は乙女ゲームの世界に転生してきました」なんて言ったら、完全に頭がおかしいと思われる。
医者の「記憶混濁」という診断は、ある意味で都合がいい。

「……すみません。ちょっと、混乱してて……」

私はそう言って、母らしき女性の手を握り返した。
その手は、思ったよりも温かくて、優しかった。

「しばらくは安静にしていただき、様子を見ましょう。記憶は、環境や人との関わりで自然に戻ることもあります」

医師の言葉に、公爵は深く頷いた。
/ 42ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp