悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第15章 『氷の微笑』発動!
私はトレーをするりと床に落とし、濡れた姿のマーゴット男爵令嬢を凍るような視線で見下ろした。
氷の微笑を浮かべながら、静かに言葉を紡ぐ。
「たしか、マーゴットさんの魔法は風属性……」
その一言に、彼女の顔は真っ赤に染まった。
「わ、私がやったとでも仰るの!? 証拠はございますの!?」
必死に反論する声が、会場のざわめきに混じる。
私は聞こえないように、さらに言葉を重ねた。
「たしか……アメリアさんも、このような跡が残っていましたわね」
その時、背後から低い声が響いた。
「それなら、怪我人が二人も出たんだ。学園長に頼んで、魔道流動術をふたりにかけてもらうといい。どこから発生したか、すぐにわかる」
いつの間にか、ルシアン様が私の後ろに立っていた。
冷徹な瞳で状況を見据え、的確な一手を放つ。
もちろん、私の足の腫れは――すれ違いざまにマーゴットの魔力を吸い取り、自分でつけたもの。
だが、アメリアの傷は違う。
出処を知られては困るマーゴットにとって、ルシアン様の提案は致命的だった。
彼女の顔はみるみる青ざめていく。
「……っ」
声にならない声を漏らし、視線を逸らす。
私は氷の微笑をさらに深め、優雅に言葉を添えた。
「まぁ! ルシアン様! 素晴らしいお考えですわ!」
会場の空気は一変した。
好奇の視線はマーゴットへと集中し、彼女の肩は小刻みに震えていた。
ロベルトと呼ばれた令息も、居心地悪そうに視線を泳がせる。