悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第15章 『氷の微笑』発動!
ガシャーン――。
大きな音が響き、給仕の男性がトレーごとシャンパングラスを床にぶちまけた。
視線を向けると、そこには床に這いつくばるアメリア。
パートナーだった令息はただオロオロと突っ立ち、助けることもできずにいた。
よく見ると、アメリアの足首には奇妙な筋が走っている。
その様子を見下ろすのは、マーゴット男爵令嬢と彼女の相手の令息。
ずぶ濡れになったアメリアは羞恥で顔を赤くし、痛みに立ち上がれずにいた。
「どんなに上等なドレスを身にまとっていても、卑しさは抜けませんわね。
ダンスも踊れないようじゃ、この学園でやっていけませんわよ? ねぇ、ロベルト様」
マーゴットはしなだれかかるように令息の胸に納まり、勝ち誇ったように笑う。
さらに、床に落ちた私たちのお揃いの髪飾りを足蹴にした。
「しかも、こんな小粒の宝石の寄せ集めの髪飾りなんてセンスが悪すぎますわ」
そして何事もなかったかのように、ダンスの列へと消えていく。
――その瞬間、私の中で何かが切れた。
いや、生まれたと言っても過言ではない。
「ユリウス従兄様、アメリアのことお願いいたします」
自分でも驚くほど冷静な声で告げると、ユリウス様は即座に動いた。
アメリアを抱き上げ、給仕たちに後片付けを指示しながら彼女を運び出していく。
私はルシアン様に手を伸ばした。
「ルシアン様。もう一曲お願いしてもよろしいかしら?」
やや高慢とも言える口調。だが、ルシアン様は察したように私の手を取り、甲に口付ける。
「喜んで。ヴァイオレット嬢」