悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第13章 好感度アップイベント!後夜祭のダンスパーティー
さーて、文化祭も終わったことだし、ここでイベント分岐点が訪れる。
後夜祭のダンスパーティだ。
ダンスパーティーの相手は自分で選択する。
この選択で、好感度アップが稼げる。
もちろん――神楽坂蓮が演じるルシアン様と行きたいところだ。
だが、私は迷っていた。
悪役令嬢をやめ、アメリアと懇意になってから、レオン様、ノエル様、ユリウス様……彼らの色んな一面を見つけてしまった。
正直、無節操だと思う。けれど、皆に好感を抱いてしまったのだ。
ゲームなら攻略サイトを見れば答えは出るだろう。
だが、この世界には攻略サイトなんてない。
自分の目で感じ、選択してきた。
破滅エンドはないと思う。
けれど、誰かひとりの好感度アップは抑えておいた方がいいだろう。
そう考えると、やっぱりルシアン様なのだ。
……ただ、最近のルシアン様が私を見る目付きが変わったのが分かってしまった。
冷たい氷の公爵の眼差し。
それが、まるで観察するように、ヴァイオレットの奥にある“しおり”を見抜こうとしている。
その視線に、胸がざわめく。
(……見られている。仮面の奥の私を)
選択の時は近い。
氷の公爵と、悪役令嬢の仮面を脱ぎ捨てた私。
その交差点に立ちながら、私は静かに息を整えた。
後夜祭のダンスパーティーを前に、貴族たちはそれぞれ自室へ戻り、支度を始めていた。
私もその流れに乗り、アメリアの手を取って自室へと招き入れる。
テーブルの上には二つのスタンド式の鏡。
その傍らにはメイドが二人、控えていた。
「え!? ヴァイオレット様、これは一体……」
驚くアメリアに、私はニッコリと微笑んで答える。
「アメリア、あなた後夜祭を出ないつもりでしたでしょう? そうは行きませんわ! 私の友人として出てもらいます」
そう言って彼女をベッド前へと連れていく。
そこには二着のドレスが用意されていた。
ひとつは夜空のように宝石が散りばめられた、紫がかったグレーのドレス。
これは私の瞳の色に合わせて仕立てたもの。
もうひとつはピンクの薔薇のようにフリルがあしらわれ、胸元に宝石がワンポイント輝くドレス。
「え……ヴァイオレット様、これって……」
戸惑うアメリアに、私は胸を張って宣言する。
「もちろん、あなたのドレスですわ! 私の親友ですもの。欠席なんて許しませんことよ」
