悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第13章 好感度アップイベント!後夜祭のダンスパーティー
模擬店の終了を告げる鐘が鳴り、賑やかだった教室は次第に静けさを取り戻していった。
私は執事姿のまま、深く息を吐く。
――長い一日だった。
「さぁ、片付けを始めましょう!」
クラスメイトの声に応じて、皆が一斉に動き出す。
テーブルの上のティーカップや皿を集め、濡れた絨毯の周りには雑巾を持った生徒たちが集まっていた。
先ほどの騒動を思い出し、胸が再び滾る。だが、今は冷静に場を整えることが先だ。
「ヴァイオレット様、こちらは私たちがやりますので!」
慌ててクラスメイトが駆け寄り、私の手から皿を受け取る。
――そうだ。公爵令嬢に片付けをさせるわけにはいかない。
彼らの必死な様子に、私は優雅に微笑を浮かべて一歩下がった。
その時、奥からアメリアが制服姿で現れた。
肩にはまだ氷嚢を当てていたが、笑顔を浮かべている。
「私も手伝います!」
その健気な声に、クラスメイトたちは一瞬戸惑い、すぐに温かい笑みを返した。
「無理はしないでくださいな、アメリア」
私は彼女に歩み寄り、そっと肩に手を置く。
「今日は十分頑張ったのですから」
アメリアは少し頬を赤らめ、けれど強がるように笑った。
「でも……お友達ですから、最後まで一緒にいたいんです」
その言葉に胸が熱くなる。
私は心の中がジーンとした。
(負傷してると言うのになんという健気さ!さすが主人公!)
わたしが更にアメリアに好感を抱いて、見つめていると、片付けの喧騒の中、ふと視線を感じて振り返ると――。
扉の外からルシアン様が静かにこちらを見守っていた。
冷たい眼差しの奥に、わずかな光が宿っているように見えた。
私は彼に向かって、ほんの少しだけ庶民的な笑みをこぼした。
――氷の公爵と氷の微笑。
その間に、確かに新しい温度が生まれ始めていた。