悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第12章 ヴァイオレットとしおり
アメリアは目を丸くし、少し頬を赤らめた。
「ルシアン様……ありがとうございます」
私はそのやり取りを見つめながら、胸の奥が熱くなるのを感じた。
氷の公爵と呼ばれる彼が、こうしてアメリアを気遣う姿。
それは冷たい仮面の奥に隠された、人としての温かさだった。
「ヴァイオレット」
ルシアン様が私に視線を向ける。
「君もよくやった。……だが、あまり無茶はするな」
私は氷の微笑を浮かべ、けれど心の奥では素直に頷いてい
た。
「承知いたしましたわ。ですが、友を守るためなら、多少の無茶も厭いませんわ」
ルシアン様は一瞬だけ目を細め、何かを言いかけてから黙り込んだ。
その沈黙が、彼の心の揺らぎを物語っていた。
模擬店の終わりを告げる声と共に、医務室には静かな余韻が残った。
――氷の公爵と、悪役令嬢。
その間に確かに芽生え始めたものがあった。