悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第12章 ヴァイオレットとしおり
氷の公爵と呼ばれるその人が、冷たい眼差しの奥に何を抱えているのか。
それはまだ分からない。
けれど、確かにその視線には、私の決意を見届けようとする温度が宿っていた。
私は胸を張り、医務室の扉へと手を伸ばす。
「私は変わって見せる!今は選ばれる側かもしれないけど、きっと選ぶ側に立ってみせる!」
(だって、ここは乙女ゲームの世界だもん!誰を攻略するか決めるのは主人公だけど、私もアメリア同様選ぶ側に立って見せる!)
「アメリア!? 大丈夫?」
慌てて医務室に駆け込むと、制服に着替えたアメリアがブラウスの上から氷嚢を肩に当てていた。
「ヴァイオレット様! 心配して来てくれたんですか!?」
驚いたように目を丸くする彼女に、私は当然のように答える。
「当たり前じゃない! 私たちお友達でしょう?」
その言葉に、アメリアは感激したように口を開いた。
「やっぱりヴァイオレット様はお優しい方ですね! 怪我は幸い軽い火傷程度で、少し冷やせば大丈夫だそうです。私、庶民なのでやけどなんて慣れてるんで、これくらいなんでもないですよ!」
そう強がって笑うアメリアは、いじらしくて胸が締め付けられる。
だが、私の心は怒りで滾っていた。
(にしても腹が立つな! ロゼッタ・バーミリオン男爵令嬢!)
拳を握りしめ、胸の奥で誓う。
――いつか必ず仕返ししてやる。悪役令嬢を舐めるなよ、格下令嬢め!
そんな私とは対照的に、アメリアは健気に微笑んでみせた。
「本当に大丈夫ですから……心配しないでくださいね」
その笑顔は、痛みに耐えながらも周囲を安心させようとする主人公のものだった。
くぅー! ライバルだけど、やっぱり主人公だけあってかわいいわ!アメリアちゃん!
私は心の中で叫びながら、彼女の笑顔を守るために、さらに強く決意を固めた。