悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第11章 文化祭とヴァイオレット
「まだ接客が残ってますの。失礼しますわ。」
ユリウス様の席へ向かうと、開口一番、彼の声が鋭く飛んできた。
「ヴァイオレット、この茶器はどこから?」
押し殺した感情が滲むその声に、私は思わずキョトンと答える。
「実家にあった、使っていなかった茶器を拝借しただけですが……何か問題でも?」
するとユリウス様は胸元からスカーフを取り出し、茶器を大事そうに包み込んだ。
「今すぐこの茶器を回収して、実家に戻しなさい! これはローゼン家が功を立てた時に国王陛下から直々に下賜された、ローゼン家家宝の茶器だ!」
珍しく怒号が飛び、私は息を呑んだ。
「それをお前が知らないはずはないんだが?」
疑わしそうな眼差しが、私の心を射抜く。
慌てて首を振り、必死にとぼける。
「似たような茶器が多くて……間違えただけですわ」
知らぬ存ぜぬを決め込むしかなかった。
ユリウス様はしばし沈黙し、疑わしげに私を見つめ続ける。
やがて低く呟いた。
「……まぁ、マーゴット嬢に対しての対応は、昔のお前がかいま見えたがな」
その言葉に胸がざわめく。
氷の微笑を浮かべていたはずの私の仮面が、ほんの一瞬揺らいだ。
「……昔の私、ですか」
私は紅茶を注ぐ手を止め、視線を落とす。
ユリウス様は茶器を抱えたまま、真剣な眼差しを向けていた。