悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第11章 文化祭とヴァイオレット
私は恭しく一礼し、執事らしい所作で彼の前に立つ。
「お褒めいただき光栄です、ノエル様。少々芝居がかった対応でしたが、場を収めるためには必要でしたの」
ノエル様は口元に笑みを浮かべ、紅茶を一口含んでから言葉を続けた。
「君は本当に面白いね。公爵令嬢としての威厳を保ちながら、庶民的な機転で相手を打ち負かす。まるで舞台の役者のようだ」
私は肩をすくめ、茶目っ気を込めて返す。
「文化祭ですもの、少し遊び心も必要ですわ。ノエル様も、ぜひ執事役をお試しになってみては?」
ノエル様は声を立てて笑った。
「僕が執事を? それは似合わないだろうね。でも、君が楽しんでいる姿を見るのは悪くない」
その言葉に、胸の奥が少し温かくなる。
氷の微笑を浮かべながらも、私はほんの一瞬、庶民的な笑みをこぼしてしまった。
ノエル様はその笑みを見逃さず、楽しげに目を細める。
「やっぱり、そっちの笑顔の方が好きだな。高慢な仮面よりも、屈託なく笑う君の方がずっと魅力的だ」
私は慌てて姿勢を正し、執事らしく頭を下げた。
「……お褒めいただき、ありがとうございます。ですが、どちらが本当の私かは――まだ秘密ですわ」
ノエル様は紅茶を置き、軽く肩を揺らして笑った。
「秘密のままでもいいさ。その方が、君らしい」
私は笑うノエル様に軽くウィンクして
「まだ接客が残ってますの。失礼しますわ。」