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悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について

第11章 文化祭とヴァイオレット


「熱い!」

場は騒然となり、視線が一斉にアメリアと紅茶をかけた女性客へと集まる。
女性客は冷笑を浮かべ、声を張り上げた。


「こんな何処の馬の骨か分からない者が入れたお茶なんて頂けませんわ!」

そして残りの紅茶を床にざらりとこぼす。
濡れた絨毯に紅茶が広がり、空気はさらに重苦しくなった。

「コノヤロー!」
しおりは拳を握りしめた。だが、ここで表に出たのは“お嬢様チート”ヴァイオレットだった。

彼女はアメリアを庇うように前へ進み、笑顔の仮面を貼り付ける。
「これはこれは、マーゴット男爵令嬢ではございませんか!」
大仰な態度で、自分より格下の令嬢に頭を下げる。

その間にルシアンはアメリアを奥へと連れて下がり、彼女を守る。

ヴァイオレットは執事の格好をしていても、公爵令嬢。
「うちの者が失礼しました。代わりのお茶をお入れしましょう」
その言葉は冷静で、場を収めようとするものだった。

だが、マーゴット嬢は引かなかった。
「由緒ある公爵位をもつローゼン家が、庶民上がりの肩を持つなんて如何なものですかしら?
ヴァイオレット様。御品格を疑われましてよ?」

嫌味を言い放つその声に、クラス全体がざわめく。
アメリアを傷つけられた怒りに臓腑を滾らせながらも、ヴァイオレットは冷静に対応する。
執事らしく礼をして頭を下げ、濡れた絨毯を見やりながら、静かに言葉を選ぶ。

「……この場を整えるのも、執事の務めでございます。どうぞお見守りくださいませ」

その一言に、場の空気は再び張り詰めた。

私は静かに屈み、胸元のスカーフをひらりと取り出した。
濡れた絨毯の上にそれを被せ、にっこりと笑顔を貼り付ける。

「応急処置でございます。せっかくのお靴が濡れませんように」

格上の私が頭を下げた瞬間、マーゴット嬢は調子に乗った。

「早く新しい紅茶を持ってきてくださらない? ここは“執事・メイド喫茶”なのでしょう?」

腕を組み、私を見下すその態度。
――それが彼女の運の尽きだった。
『悪役令嬢ヴァイオレット・ド・ローゼン』に喧嘩を売るなど、愚かにも程がある。

「はい!すぐにお持ちします」
私は朗らかに答え、踵を返して奥へ引っ込んだ。
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