悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第9章 庶民感覚を取り戻そう!
思わず口を滑らせた瞬間、アメリアが首を傾げた。
「祖父の家?公爵家でも釣りをなさるんですか?」
しまった――!完全に庶民感覚に戻ってしまった、と心の中で叫ぶ。
慌てて背筋を伸ばし、笑みを取り繕う。
「ほほほほ……祖父の邸宅の近くに川があって、使用人に教わりましたの」
その時、背後から低い声が響いた。
「そんなこと、僕に隠れてやってたのかい?」
振り返ると、ユリウスが腕を組み、風のように静かな眼差しでこちらを見ていた。
気づけば、後ろにはルシアン、レオン、ノエルも立っていた。
四人の視線が一斉に私へと注がれる。
ルシアンは柔らかな笑みを浮かべながらも、声には棘があった。
「ヴァイオレット、君がそんな庶民的なことを楽しんでいたなんて……僕には教えてくれなかったね」
レオンは肩をすくめ、挑発的に笑う。
「俺なら、川釣りくらい普通だ。けど、君がそれを隠してたってことは……俺にだけは知られたくなかったのか?」
ノエルは軽口を叩きながらも、目は真剣だ。
「へえ、面白いね。ヴァイオレットが釣りをするなんて。僕にも教えてくれればよかったのに。……まさか、誰か特別な人にだけ見せてたんじゃないだろうね?」
ユリウスは腕を組んだまま、風を纏うように静かに言葉を投げる。
「……軽率だな。庶民感覚を隠す必要はない。だが、誰に見せるかは選ぶべきだ」
四人の言葉が交錯し、空気が張り詰める。