悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第1章 目が覚めたら
あたし、怪我してるの?
疑問符が脳裏でダンスしてる中に、私に抱きついてきた栗色の髪の男性が
「目が覚めて、よかった。お前は馬に蹴られて、頭を打ってそのまま倒れてたんだよ。もう3日も寝たきりだったんだ!」
すると、銀髪の女性が続けて発言した。
「そうよ。ヴァイオレット!もう目覚めないんじゃないかと思ったわ!」
女性の発言に更に疑問符が飛び出た。
「あの……勘違いをされてるようですが、私はヴァイオレットじゃなくて、藤咲しおりと申しまして……」
おずおずと、しかしはっきり自分の名前を名乗った私に抱きついた2人は顔を見合せて
「おい!医者を呼べ!ヴァイオレットがおかしいぞ!」
と、慌てて医者を呼びに行かせ、銀髪の女性は青ざめた顔で私を覗き込み
「何を言ってるの?ヴァイオレット……あなたは我が公爵家の娘、ヴァイオレット・ド・ローゼンよ」
と、真剣な眼差しで私を見つめてきた。