悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第8章 市場に行こう!
――夏休み
わたしは屋敷にアメリアを招待した。
ローゼン家の食卓に並ぶ料理は、どれも見事な品だった。銀の食器に盛られた肉料理、繊細な彩りの前菜、香り高いワイン。
けれどアメリアは、緊張で喉が詰まり、ほとんど箸を進められなかった。庶民の彼女にとって、この豪華さはむしろ居心地の悪さを増すばかりだった。
(……公爵令嬢として扱われるのは光栄なはずなのに。どうしてこんなに微妙に感じてしまうんだろう)
そんな時、街に外商がやってきて珍しい市が立つという知らせが届いた。普段は見られない輸入品や、職人の手作りの工芸品が並ぶらしい。
私はこの情報を得てアメリア、ルシアン、レオン、ノエル、ユリウスみんなを誘った。
「ねえ、みんなで市場に行かない? ルシアンも、ノエルも、ユリウスも!」
ルシアンは柔らかく微笑み
「君が楽しめるなら」
と快諾。
ノエルは
「面白そうだな。珍しい品なら僕も興味がある」
と軽快に応じる。
ユリウスは少し間を置いて
「……悪くない。外の風に触れるのもいいだろう」
と静かに承諾した。
そして、庶民出の貴族レオンもその場にいた。彼はアメリアの緊張を見抜いていたのか、軽く肩をすくめて笑った。
「市場なら気楽だろう。俺も行こう。ウチは庶民からなりあがりの貴族だからかな?こういう雑踏の方が落ち着く」
その言葉に、アメリアの胸がふっと軽くなる。屋敷の豪華さに馴染めなかった自分を、レオンは自然に理解してくれていた。
夏の陽射しの下、五人は街へと向かう。