悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第7章 対象キャラ全員の心を掌握したい
ヴァイオレットは、胸の奥でキャピキャピと弾む感情を抑えきれなかった。
(ユリウスが褒めてくれた……! でも、ノエルも優しい……どうしよう、二人とも格好いい……!)
頬が熱を帯び、心臓が跳ねる。だが同時に、二人の間に漂う険悪さに焦りが走る。
(やめて、喧嘩しないで……! 私のせいで空気が悪くなるなんて嫌……!)
ユリウスは風を纏い、ノエルは炎のような視線を返す。
ヴァイオレットはその狭間で、嬉しさと不安を同時に抱え、笑顔を保とうと必死だった。
講堂の空気は、ユリウスとノエルの視線の交錯で張り詰めていた。
風と炎がぶつかり合うような、見えない緊張。ヴァイオレットはその空気を敏感に感じ取る。
(……やだ、空気がピリピリしてる。私のせいで険悪になるなんて嫌!)
彼女はぱっと両手を合わせて、にっこり笑った。
「う、うふふ……二人とも、ありがとう存じますわ! 私、すごく嬉しいですのよ」
その声は軽やかで、まるで鈴の音のように場を和ませる。
ユリウスの風がふっと柔らかくなり、ノエルの炎も少し落ち着いた。
二人は同時に、彼女の笑顔に心を揺らされる。
彼女の笑顔を見てユリウスは、冷静な仮面の下で、胸の奥のラブメーターが急上昇。
(……やはり、俺の風はこの笑顔を守るためにある)
ノエルは牽制の言葉を飲み込み、彼女の無邪気さに心を奪われる。
(……こんな風に笑う彼女を、俺が隣で支えたい)
そんな二人を見てしおりは、胸がキャピキャピと弾む。
(……どうしよう、二人とも優しくて格好いい……!)
張り詰めていた空気は、彼女の一言で一気に緩み、代わりに三人のラブメーターが同時に跳ね上がった。
風と炎の狭間で、彼女の笑顔が小さな奇跡を起こしたのだった。