悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第5章 ノエル・アルベリッヒ
(きた!イベントセリフきた!!)
「私、最近少し……魔力の揺らぎを感じることがあって。
感情と魔力の関係、もっと知りたいと思ってますの」
ノエルはしばらく黙っていたが、やがて静かに本を閉じた。
「……なら、君に合いそうな論文がある。ついてきて」
彼は立ち上がり、別の書架へと歩き出す。
私は慌てて後を追った。
「これだ。“魔力共鳴における個体差と記憶の影響”。
……君の言う“揺らぎ”は、記憶由来の魔力干渉かもしれない」
「記憶……?」
「君の魔力は、他の貴族令嬢とは違う。
……まるで、別の世界の構造を知っているような、そんな感触がある」
(えっ、ちょっと待って、今のって……バレてる!?)
「……君は、面白い。
もしよければ、今度一緒に研究しないか?」
「……喜んで」
その瞬間、彼の瞳がわずかに細められた。
それは、微笑みに近いものだった。
(好感度、上がった……!)
図書塔の静寂。
魔法理論科の書架に囲まれ、私はノエル・アルベリッヒの隣に立っていた。
彼は今日も無言で本を読み、誰にも興味を示さない。
でも、私は知っている。