悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第5章 ノエル・アルベリッヒ
王立魔法学園『アカデミア・グランヴェール』。
午後の自由研究時間。
私は、図書塔の最上階にいた。
(ノエル・アルベリッヒ。魔法理論科主席。雷属性。
無口で無愛想、でも知識量と魔力制御は学園随一。
ゲームでは“知識共有イベント”で好感度+15……!)
でも、彼は基本的に誰とも関わらない。
イベントを発生させるには、彼の“興味”を引く必要がある。
私は、魔法理論の専門書を手に取り、そっと彼の隣に腰を下ろした。
彼は、こちらを一瞥しただけで、また本に視線を戻す。
(……よし、無視されてない。これはチャンス)
「……その本、前から気になっていたんです。
“魔力干渉と感情波動の相関性”──難しいけれど、面白そうですね」
ノエルの手が止まった。
彼の視線が、ゆっくりとこちらに向く。
「……君が、その本に興味を持つとは思わなかった」
(きた!イベントセリフきた!!)